赤外パスフィルター R640 / IR8502021年07月22日

ここ数年、天体用フィルターにはまってます。私が持っているフィルター、いくつか種類があるのですが、ほぼ全て、目的は光害のカットです。自宅はご多分に漏れず光害がかなりあります。そういった中、眼視や写真で天体観測を楽しみたい。

そんなニーズにこたえてくれるのが所有する天体用フィルターです。

最近、惑星状星雲撮影や散光星雲の撮影に使っているのが、HαとOIIIを選択的に通すデュアルバンドパスフィルターで、私はIDASのNB1 → NB4 → NBZと購入しました。
このフィルターで撮影した写真は、この辺り、またはこの辺りをご覧ください。 

今回ご紹介するのは、ほぼ全ての可視光をカットし、赤外線領域のみを通すフィルターR640とIR850です。




この2つ、両方ともハイパスフィルターと言われる、特定の波長以下をカットするフィルターで、違いはどこから上の波長を通すかというところだけです。

IR640:640nm以上のみを通過
      可視光領域である、Hα(656.3nm)の輝線も透過
IR850:850nm以上のみを通過

※IR640に関しては、サイトロンのフィルターが良く利用されているようですが、現在、在庫が無いとのことで探していたらKANIのR640があったのでそちらを購入しました。サイトロンは31.7㎜ですが、購入したのは52㎜。しかも価格は同じくらいですので、お安く買えたかな、と思います。

前置きが長くなりましたが、ここからが本番。
そもそも可視光がほとんどカットされるフィルターを何に使うのか?

『可視光で撮れば良いじゃん?』

ですね。

目的は光害の影響を少なくすることです。

夜空に輝く天体は、その種類によって出している波長が異なります。主な波長は以下の通りです。

・惑星状星雲・・・HαとOIII
・散光星雲・・・Hα
・超新星残骸(かに星雲)・・・HαとOIII、SII
・恒星・・・連続スペクトル...

惑星状星雲や散光星雲、超新星残骸などは特定のスペクトルで輝いているので、そこだけ選択的に通す、上記したデュアルバンドパスフィルターIDAS NBZなどは凄く高い効果を発揮します。夜空にある光害をカットして、HαとOIIIのみを透過させるので、写真撮影でも眼視観測でも驚くような効果が得られます。

実は昨日、我が家のベランダからNBZを使い、月齢11の月明かりの中、R200SSの100倍で、M57を眼視で観望、リングがくっきり見えました。これには驚きました。

ただ、太陽もそうなのですが、恒星は基本的に連続スペクトル。デュアルバンドパスフィルターはあまり効果が高くないと思われます。実際、撮影すると、惑星状星雲は強調されますが、周りにある恒星は相対的に暗く、写りはあまり良くありません。M57の中心星とかですね。うっかりすると写りません。(笑)

単独の恒星だけではなく、それにまつわるもの、球状星団や散開星団、そして、銀河、これらは全て恒星が集まったものなので、あまり効果は高くないと考えられます。

そこで、可視光をカットして赤外領域を中心に通すフィルターです。

太陽光は、虹でもおなじみの通り、紫~赤までの可視光が含まれますが、赤外領域も多く含まれます。恒星も太陽同様で赤外領域も多く含みます。この部分を使って撮ってしまおうという考えです。

普通に可視光で撮影すると、もろに光害の影響を受けてしまいますが、『光害』は人間が生活するために出した明かりですから

『目に見えない赤外領域に光害はかなり少ない』

んですね。

つまり、この領域のみを通す、R640やIR850フィルターを使って撮影すれば、多くの光害がカットされて、銀河なども浮き上がってくるのでは?という考えです。

特に銀河は暗いものが多いので、効果が期待できます。

私が購入したR640とIR850ですが、R640はHα線も含まれます。実は銀河ってHαの赤い領域(つまり散光星雲です)を持つものも多く、こちらを使った方が華やかになるかな、と思い、以前よりIR850は持っていたのですが、R640も買ってみました。(^^)

↓はM33ですが、結構赤い部分あるでしょ?


恒星にまつわる連続スペクトルの天体を撮影、また、電子観望するのには良さそうに思えるこのフィルターですが考慮しなければならない点やデメリットは以下の通りです。

1.赤外線領域の透過率が高いカメラが必要
 可視光をカットするフィルターを使いますので、そもそも可視光しか透過しないカメラでは撮影できません。一眼レフなど市販のカメラは、赤外領域の透過率は高くないものと思います。Hαもかなり写りは悪いですからね。ま、赤外線リモコンをカメラに向けて照射すると普通に見えますので、950nmあたりの波長もそれなりに写るようですが、可視光に比べると感度は相当低く抑えられているものと思いますので、銀河の撮影などには不向きだと想像します。

2.モノクロになる
 R640はHα以上を通すので、そのままカラーのカメラで撮影すると赤い写真となります。IR850は可視光領域は無いので、輝度情報(赤外線を反射した量の情報)しかありません。ですので、基本は、モノクロカメラでの撮影、もしくは、カラーカメラの場合、850nm以上の領域でカラーバランスの崩れないカメラでの撮影となります。両者とも、基本的にはモノクロ写真(色はなく、輝度情報のみ)となります。

結構ハードルが高そうですよね、特に1。私が撮影に使おうと思っているのは、

ASI462MC(カラー)
ASI290MM(モノクロ)

です。リンクしたページを見ていただくと分かりますが、ASI462MCは感度のピークが800nm付近にある極めて赤外線感度の高いカメラです。また、このカメラはカラーですが、850nm以上の領域では、RGBそれぞれのフィルターで感度がほぼ同じなので、色合いが崩れることもなさそう。つまり、

ASI462MC+IR850フィルターで、赤外モノクロ撮影ができる

ということになります。ただ、こちらはR640で撮影すると、640~850nmでは、Rフィルターを通過する光が多いので、赤がかなり強く出るはずで、ちょっと使いにくそうです。

ASI290MMはモノクロの高感度カメラです。こちらはそもそもモノクロなのでカラーバランスを気にする必要はありません。ただ、ASI462MCに比べると850nm以上のところの感度はピークの50%程度とあまり高くはありません。

なので、ASI290MMはR640と組み合わせると良いかなと思ってます。

ちなみに、写真は基本的にモノクロになりますが、銀河は色合いに乏しいのでモノクロでもそんなに違和感はないと思います。でも、やっぱりカラーが良いですよね、Hαとか。赤外を使ってモノクロで撮影した写真とフィルター無し、カラーで撮影した撮影した写真をLRGB合成し、カラー化することも可能・・・、だと考えてます。

まだやったことないですが、上記の通り、色々妄想は膨らんでます。
早く試してみたいですね。

秋は銀河の季節。何を撮りましょうかね、楽しみです。