電子観望のススメその2 ― 2020年10月12日
前回の続きです。
電子観望の目的(メリット)はいろいろあると思います。
1. 眼視では見えないものを見る(特に光害のあるところで)
2. みんなで同時に楽しむ
3. コロナ禍でも望遠鏡に触れず観望会の開催が可能
などですね。
今回は1のメリットについて書いてみたいと思います。何故眼視よりも良く見えるのか、というと、ポイントは2つあると考えています。
1つ目のポイントは、カメラの特性です。
人間の目はとてもよく出来ていると思います。例えば木星の眼視観望って、かなり詳細に表面の模様を確認することが出来ます。でも、それと同じレベルの物を、カメラの1枚撮りで撮影することは、実は相当に難しいです。
私は惑星撮影も行いますが、動画で撮影してそこから数千枚の静止画をスタックして、さらに画像処理で細かい模様を炙り出して1枚の写真に仕上げていきます。
そうすると1枚撮りでは到底できない様な素晴らしい写真に仕上がります。
つまり、カメラは1枚撮りでは眼視にはかなわないのですが、眼視にはできない 『色んな小細工』 が出来るわけです。
また、眼視と比べた時のカメラの最大のメリットは、光をため込めることです。こういった特性を持つカメラを使う事、これらが電子観望のメリットの1つ目です。
2つ目のポイントはフィルターです。
観望対象は、ものによって、特定の波長で輝いているものがあります。例えばオリオン大星雲や干潟星雲、わし星雲などの散光星雲は、波長656.3nmのHαが非常に強く、M57リング星雲、M27アレイ星雲などの惑星状星雲は、上記 Hα と OIII (496nmおよび501nm) が非常に強く出ます。
つまり、これらの対象をに対しては、HαとOIIIのみ透過するフィルターを使っても対象の光はほぼロスなく通過することになります。
逆に、こちら(外部サイトです)に詳しく書かれていますが、いわゆる光害は、Hg 線やナトリウム線、白色LEDによる波長が多く含まれます。
これらの光害の波長を透過せず、Hα と OIII のみ透過するフィルターを使えば、相対的にこれらの星雲が浮き上がってくるはず。
こういった特定の波長のみを透過するフィルターは以前からあったのですが、多くが Hα のみ、や、OIII のみなど、シングルバンドパスフィルターになっていて、カラーバランスが大きく崩れるんですね。
ところが最近、HαとOIIIを2つ同時に通すデュアルバンドパスフィルターが登場し、カラーバランスも調整可能となりました。
私は実はまだ、この方法を惑星状星雲でしか試したことがありません。なので、まずは、惑星状星雲限定で書かせていただきますね。(^^)
散光星雲でも効果はかなり高いハズですが、こちらはまた後日確認したいと思います。
ちなみに、恒星やそれが集まった散開星団、球状星団、系外銀河などは幅広いスペクトルで輝いているためフィルターの効果は惑星状星雲ほど高くないと思われます。
惑星状星雲に対し電子観望を行う具体的な方法は以下の通りです。
・利用する望遠鏡
暗い小さな対象を観望します。小さいものを拡大すると暗くなりますし、かつ、きつめのフィルターで光量がかなり落ちますので、出来るだけ口径は大きい方が良いと思います。私はR200SS使ってますが、20㎝あれば十分楽しめます。
・利用するカメラ
最近だと、ZWOが良いと思います。使う望遠鏡にもよりますが、小さい対象が多いので、ASI462MCなど、1/3くらいの小さなイメージセンサーのものを選択するのが良いと思います。
ちなみに、R200SSの800㎜で、ASI462MCを使うと、フルサイズ換算で5500㎜ほどになりますので、M27だとかなり大きく撮影することが出来ます。
その他、M57など小さな対象のものには、Powermate等の拡大レンズを利用します。
長焦点のシュミカセなどを所有されている方であれば、ASI385など、もう少し大きめのセンサーのモデルを購入されても良いかもしれません。
・フィルター
デュアルパスバンドフィルターを使います。私はIDASのNB1を使ってます。同様のフィルターではQBPフィルターや、IDASからもさらに色々出てまして、NB2、その後継のNB4、さらに、近々でNBXというフィルターも登場するようです。
ご紹介したフィルターは複数の径のものが準備されていますので、ご自身の望遠鏡にあったフィルター径のものを選択すればよいと思います。
望遠鏡によってはフィルターを固定する場所がないケースもあると思いますが、その場合は、ZWOのこのアダプターの中にM48のフィルターが入りますので、こちらを選択するのも良いと思います。アダプターはニコン、キヤノンしかないようです。ちなみに、フィルターサイズは48㎜ですが、アダプターの径としては52㎜も入りますので、カメラの48㎜ → 52㎜のステップアップリングを使えば、52㎜のフィルターを入れることも出来ます。
では、次回は具体的な観望方法についてご説明します。光害の地域で、こんなものをライブで見ることを目標にします。
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