GearBoxのLAN環境での利用2022年04月29日

前回の続きです。宅内で望遠鏡をPCから操作したい。そのために、USB接続をLAN延伸する目的でGearBoxを使ってみようというものです。GearBoxの低速なwifi は使わず、有線LANポートのみ利用します。

以下、昼間に室内で動作チェックしてみました。

ステラショット2:  Ver. 2.0J
GearBox: 1.2.131.1
オートガイダー:ASI290MM(USB2.0でGearBox接続)
カメラ:Nikon Z7(GearBox接続)

・GearBoxは宅内のLANに有線接続。宅内のDHCPサーバーからIPを取得
・制御用のPCも同様に、宅内LANに接続

この環境で、オートガイダーとカメラの動作を確認してみましたが、結論から申し上げると、動作上問題はなく快適でした。

Wifiを利用していた際に見られた、GearBox特有の遅延(オートガイダーのリフレッシュの遅さやカメラ画像の転送にまつわるDelay)は気にならない程度まで改善しました。

ま、目的がUSB→LANへの延伸なので、単なるUSBデバイスサーバーの様な使い方ではありますが、Wifiを使わず、LANのみで利用すればそれなりに使えそうです。

ところで、今回色々テストをしてみて分かったことがあるのでシェアします。まず、GearBox経由で接続した際のネットワークトラフィックです。

ステラショット2を稼働させているWindows10のパフォーマンスモニターで確認したところ、常時100Mbps程度発生していました。メインカメラでの撮影は行っていないので、全てオートガイダーによるトラフィックです。かなり大きいですね。

GearBox経由でオートガイダー接続した際のネットワークトラフィック


その際、ちょっと驚いたのですが、CPU使用率が70~80%に達していました。CPUは、Corei7-6700なので、古めではありますが、4コア / 8スレッドのそれなりに高速なデスクトップPCです。

GearBox経由でオートガイダー接続した際のCPU使用率

ちなみに、GearBoxを外し、PCのUSBポートにASI290MMをオートガイダーとして接続した際は、下のグラフの通り、40~50%くらいでしたので、GearBox経由でオートガイダーを接続すると、PC側のCPU使用率もかなり上がると考えておいた方がよさそうです。遠征先だと消費電力が気になるところですが、宅内利用であればそんなに目くじら立てなくても良いかもしれませんが。


ちなみに、有線LANを使わず、GearBoxの Wifi にPCでダイレクトに接続した際のネットワークパフォーマンスは16Mbps程度でした。。。



100Mbps必要なところが1/6くらいしか出ていないわけですから、ま、オートガイダーの画面の遅延が大きい(コマ落ちが激しい)のは結果として当然かなと思います。もちろんオートガイダー種類によるとは思いますが、少なくとも、ASI290MMはGearBoxの wifi 経由では使えそうにありません。

逆に言うと、モバイル wifi で100Mbps出るものがあれば、使えるかもしれませんね、ま、外出先でそんな環境を作ろうとは思いませんが。(笑)

いずれにしても、GearBoxは有線のみでの利用で考えた方がよさそうです。

ところで、今回ASIAir Pro のネットワークトラフィックについてもテストを行ってみました。上記GearBoxと比較すると結構衝撃の結果でした。

上記GearBoxと同じ以下の構成です。

・ASI Air Proを宅内LANに接続
・オートガイダーとして、ASI2900MMをASI Air Pro のUSB2.0ポートに接続
・iPAD を宅内LANに設置されたWifiに接続(ASIAirとは同一サブネット)

この際のトラフィックが以下の通りです。



GearBoxで100Mbps食っていたネットワークトラフィックが何と3Mbpsです!これを見たときは衝撃でした。さらに、驚くべきは、iPAD上のASI Air アプリでオートガイダーの画像表示を別の画面に推移すると、数10kbpsまで低下します。つまり、システム上はオートガイダーの画像転送は必要なく、人がオートガイダーの画像を見るため(ピントや露出合わせなどですね)やそのオペレーションのためにのみ画像を転送している・・・、と理解できます。

今回テストを行ってみて、以下のことが分かりました。(間違っているかもしれませんが)

ASI Air Pro もGearBoxも同じラズベリーパイをベースとしていますが、商品コンセプトが全く異なる様です。

ASI Air Pro
・基本的な処理は全てラズベリーパイ上で行い、必要な最低限の情報のみiPADに送信
・iPAD は単なる情報表示と操作端末の位置づけ

GearBox
・GearBoxは単なる情報収集及びステラショットへの転送端末
・オートガイドに必要な処理は全てステラショット側で行う。このため、GearBoxからローデータで多くの情報を入手する必要がある

最近はIoTやエッジコンピューティングなんてものも流行ってますが、基本はIoTデバイスに近いエッジ端末上できる限り処理して必要な情報のみ中央に送るというのが鉄則ですよね。

それに沿って開発されているのがASI Air Proということになりそうです。ステラショットは良くできたソフトだと思いますが、よくできているがゆえに、端末側での処理がおろそかになってしまった、その結果魅力のない製品になってしまったのでしょうね。

もう少し、GearBox側で出来る処理を増やして、転送するデータを最小限に抑えれば、魅力ある製品になるのではないか、とは思います。

あと、最後になりますが、使えそうな、GearBoxのLAN接続。もう少しこんな機能があると良いなぁと思ったところを下記します。上にあるほど強い要望であることを示しています。

1.ASI 2600MCなどでのGain100固定での撮影への対応
 現時点では、とびとびの値しか設定できず、Gain0は可能ですが100は指定できません
2.電動フォーカサーへの対応
 オートフォーカスできると良いです
3.自動導入からの自動導入補正
 今は、導入後、導入補正を手動で行う必要がありますが、ワンクリックで出来ると良いなと
4.淡い天体のグラフィカル表示(ステラショットの星図)
 例えば、ハート星雲や、クラゲ星雲とその周りの散光星雲などの表示に対応して欲しい
5.ステラショットからのGearBoxのディスカバー
 ブロードキャストパケットを使ったGearBoxの『発見』に対応して欲しいです。
 DHCPのLANに接続すると、IPが不明です。

ということで、ま、GearBoxもLANでは使えそうかな、という結論でした。(^^)