PentaxQ 惑星撮影2013年01月03日

フィルムカメラ全盛の頃、惑星撮影と言えば、

望遠鏡 + 接眼レンズ + カメラアダプター + 一眼レフ

で構成される拡大撮影が一般的でしたが、デジタルデバイスの飛躍的な進化のお陰で、現在では色んな選択が可能となりました。

そこで、と言うわけではないのですが、ここでは惑星撮影を行う際のポイントを考えてみたいと思います。ちなみに、私自身、惑星撮影に最適な機材を考え始めて間がありませんので、その点はご了承を。

望遠鏡を使った惑星撮影の方法には、コリメート撮影、直焦点撮影、拡大撮影があります。この方法とその特徴に関しては別途述べさせていただくとして、今日は、木星、土星を適切な明るさ・大きさで撮る為の条件をまず確認してみたいと思います。

ISO100、F11の場合の、木星、土星に必要なシャッタースピードは以下の通りです。

木星:1/32
土星:1/8

土星は、木星に比べて暗いので、4倍の時間が必要ということです。
拡大率は・・・、実際に見ていただいた方が良いと思いますので写真をご確認下さい。

例えば、木星を133倍で撮影すると・・・、

133倍の木星



一方、250倍で撮影すると・・・、


266倍の木星



とまぁこんな感じです。テスト撮影に利用した物ですので、中央に写ってないとか、向きが違う!ということはご容赦下さい。あくまで大きさの比較を。

ちなみにこの写真2枚は、R200SSにPentaxQを付けてコリメート撮影した物です。

トリミング等撮影後の処理も出来ますが、ある程度迫力のある写真を撮ろうと思えば、133倍はちょっと小さいですよね・・・、望遠鏡の能力が許せば、やはり、200倍以上は欲しいところです。

ということで、次回は、200倍出すために理想的な機材について考えてみたいと思います。

Pentax Q M422013年01月03日

Borg77EDⅡ+PentaxQの直焦点でM42を撮ってみました。

神奈川県藤沢市の明るい夜空かつ月明かりの中という悪条件ですが、ISO640 10秒でこんな感じです。空の条件が悪いのか、カメラの性能なのか、設定が悪いのか、黒の階調表現が少し荒い気がしますが、4重星のトラペジウムはくっきりと写ってます。PentaxQの場合、最長露出時間は30秒(Bulbモードでも32秒で強制終了となります)ですので、どこまでいけるかは分かりませんが、明るく小さなM57、M27等の惑星状星雲や、APS-Cのカメラだと長焦点かつ長時間露光が必要な、M81、M82等の小さな暗い銀河の撮影にも使ってみたくなるカメラです。


M42


Pentax Q 拡大率その12013年01月04日

前回、惑星撮影には、200倍以上の倍率が好ましいとお伝え致しました。
今日はその拡大率をどう実現するかを考えてみます。

 ※もし、ご覧になってない方、いらっしゃいましたら、1/3のブログをご確認下さい

例えば、望遠鏡を目で覗く場合、対物レンズの焦点距離を、接眼レンズの焦点距離で割った値が倍率ですよね、つまり、

倍率 = 対物レンズの焦点距離/接眼レンズの焦点距離

です。

上記は、対物レンズ + 接眼レンズによる拡大方法なのですが、撮影を考えて・・・、対物レンズのみで200倍の画角を実現するためには、標準レンズの200倍の焦点距離を持つ望遠鏡を準備する必要があります。

例えば、各サイズの標準レンズは、おおよそ以下の通りですが、

・35mmフルサイズ  50mm
・APS-C         30mm
・Pentax Q       8.5mm

それぞれのカメラで、200倍を実現するための対物レンズの焦点距離は、

・35mmフルサイズ  50mm×200 = 10,000 mm
・APS-C         30mm×200 =  6,000 mm
・Pentax Q       8.5mm×200 =  1,700 mm

となります。

計算上は上記の通りなのですが、どうでしょう、実現できそうな数字として。

再度、我が家のR200SSの800mmの焦点距離ベースで考えてみるると、1700mmであれば、2倍程度のバローレンズを使うだけで実現できそうですが、6000mmだと、7倍以上、10,000mmに至っては、12倍以上に引き延ばす必要があります。

高品質のバローレンズを提供しているテレビューでも、最大は5倍ですので我が家のR200SSでは、1700mm以外はちょっと無理そうですよね。つまり、APS-Cとフルサイズでは、直焦点での惑星撮影は拡大率を稼げないため、難しそうということになりそうです。

上記の違いは撮像素子の大きさの違いからくるのですが、惑星撮影には、小さな撮像素子が有利と言われているのは、このような点があるのです。

私が惑星撮影用としてPentax Qに注目した第一の点はこの辺りです。
勿論他にも要素はありますので、そのあたりは追々・・・。

ちなみに、デジタル画像処理技術と相まって高画質の惑星撮影を可能としたToUcamの撮像素子をPentax Qと比較すると、

 ToUcam Pro 4.60mm×3.97mm
 Pentax Q     6.20mm ×4.60mm

です。ToUcamはPentaxQより、さらに拡大率が稼げるということになります。
ただ、ToUcamはもはや手に入らないですからね・・・。

今回は、200倍という拡大率を直焦点(対物レンズのみ)で実現する方法とその可能性について示しました。次回は、いくつかある撮影方法について特徴をご説明したいと思います。

FS-60Q2013年01月04日

もう2ヶ月ほど前になるのですが、FS-60Q購入しました。高橋製作所80周年を記念したアニバーサリーモデルで、青色です。我が家では、Vixen R200SS、Borg 77EDⅡに続き、3本目の鏡筒となります。

FS-60Q


2012.11.14ケアンズでの皆既日食観測用に購入したのですが、この望遠鏡、口径6cmとは思えないほどよく見えます。とにかく色収差が少なく、コントラストが高いです。反射望遠鏡と供に天体歴を重ねてきた私にとって、屈折望遠鏡の”若干黄色く着色された月”は気持ちの悪い物だったのですが、この望遠鏡にはそのあたりが全く感じられません。まだ使い込んだわけではないのですが、150倍程度に上げて木星を観測しても全く像は破綻しません(勿論集光力不足のため暗くはなります)。

惜しいのは、接眼部の内径(薄緑色の部分)が、2インチアイピースより小さい点です。接眼部のパーツ(黒い部分)を2インチ対応の物に組み替えることにより、Nikon NAV-17HWで合焦可能なことを確認しましたが、手持ちの2インチのダイアゴナルを入れるとピントが出ません。この望遠鏡で2インチアイピースを利用しようとするとかなり制約がありそうです。

なお、この薄緑色の接眼部は、FC-76DCと共通のパーツとなっているようです。

断面はこんな感じです。この内径が49mmで、2インチ(50.8mm径)のダイアゴナルが差し込めません。もう少し大きければ、ピントが出そうな気がするのですが。


FS-60Q 詳細2013年01月05日

FS-60Qは、

対物レンズ、1.7倍エクステンダー、接眼部

の3つのパーツで構成されており、焦点距離は600mmのF10です。エクステンダーを組み込むことによりF10という無理のない設計になり、収差のほとんど感じられない素晴らしい望遠鏡になります。このエクステンダー部分はねじ込み式となっていて、簡単に取り外すことが出来ます。取り外すと、FS-60CB相当、焦点距離は355mm(F5.9)となります。

エクステンダー(写真左)を取り外した写真。びっくりするほどコンパクトになります。

F-60CB

PentaxQの直焦点で写真を撮ろうとすると、その拡大率の高さから、撮影対象によっては短い焦点距離の望遠鏡が欲しくなることがあります。その際は、この様な構成で写真を撮っています。

試しにFS-60CB+PentaxQの直焦点で月を撮ってみました。この組み合わせも相性良さそうですね。

FS-60CB moon

ちなみに、FS-60CBはF5.9ですので、通常の35mmフルサイズやAPS-Cで写真を撮ると、周辺像がかなり悪化します。このため写真を撮る際はフラットナーなどの利用が鉄則だったりするのですが、PentaxQの場合、中心部だけの強拡大となるので、フラットナーは必要なさそうな気がしています。

Pentax Q 拡大率その22013年01月05日

PentaxQを使うと、35mmフルサイズやAPS-Cよりも拡大率を稼げるのですが、イメージしやすいように、FS-60CBとPentaxQで実際に撮影した月の写真を、APS-C、35mmフルサイズの画角と比較してみました。こんな感じになります。


size

随分違いますよね。
この拡大率こそ、私がPentaxQを惑星撮影用にと考えた理由の一つなのです。


Pentax Q コリメート法 その12013年01月05日

今回は、眼視中心の私を写真撮影に導いてくれたコリメート法についてご説明したいと思います。

私の天体歴は30年ほどです。まぁ、そのうち15年くらいは抜けてるので、実質は15年ほどなのですが、そのほとんどが眼視での観測です。勿論、見ると美しい、土星や木星を写真に撮りたいと考え、フィルムカメラで実際に写真に撮っていたこともあります。ただ、そのほとんどが、目で見た物より大きく劣る物で、観測は眼視中心!を加速させた面はあります。

最近は、首都圏周辺の自宅のベランダを主な観測地としていますが、たまの休暇に望遠鏡担いで夜空の綺麗なところに行った時には以下の葛藤に苦しみます。

眼視を行うのか、それをあきらめて写真撮影を行うのか・・・。

その究極の二者択一を、両方同時に満たしてくれるのがコリメート法です。

コリメート法は、接眼レンズを付けた望遠鏡を、目で覗く代わりにカメラで覗いて撮影する方法です。観測会などの時に、携帯電話のカメラを接眼レンズに押し当てて撮影している方をたまに見かけたりしますが、まさにあの方法です。

この方法のメリットはなんと言っても、今、まさに目で見ている物を写真に撮ることが出来るということであり、私にとってはこのメリットが極めて大きいのですが、公平を期して・・・、特徴を下記します。

メリット
 ・今見ている物を写真に撮ることが出来る!
 ・レンズの取り外しが出来ないコンパクトデジカメや携帯電話等でも撮影可能
 ・倍率の微調整が容易(接眼レンズを取り替えるのみ)
 ・眼視からのパーツの変更が少ない(基本的に追加のみ)

デメリット
 ・対物レンズ、接眼レンズ、カメラのレンズを経由することによる像の劣化がある
 ・ピント合わせが2重で必要(望遠鏡とカメラ側)
 ・光軸の調整や、ケラレへの対処が必要


合成焦点距離の計算方法などは後ほど記載させていただくとして、まず、構成方法についてご説明したいと思います。

ちょっと前置きが長くなってしまいましたので、”その2”に続くということで・・・。

Pentax Q コリメート法 その22013年01月06日

コリメート法の続きです。この方法は手持ちのカメラをそのまま接眼レンズに押し当てて撮影すれば良いので原理的には簡単なのですが、実際やってみると結構難しかったりします。主に難しい点は下記の通りです。

・ケラレが大きくて覗けない
・光軸が合わない
・対象の天体が見つからない
・ピントが合わない
・明るさ調整が出来ない

などです。
上記にも関連しますが、コンパクトデジカメなどを手で接眼レンズに押し当てて撮影をしていると、何かしらの治具を使ってカメラを固定する必要があることに気づいてきます。
 
カメラの固定方法にはいくつかありますが、私が使ってるのは、ビクセンのデジタルカメラクイックブラケットⅡという物です。微調整が結構簡単にでき、比較的ガッチリ固定できるのでなかなか優れ物だと思います。固定先は接眼レンズや、アイピースホルダーなどが利用できます。

           デジタルカメラクイックブラケットⅡ

           ①クランプでの締め付け
           ②上下移動
           ③回転方向移動
           ④左右方向移動兼カメラ固定用
 
           アイピースホルダーで固定したLVW 22mmとPentaxQ
LVW-22+PentaxQ

手持ちの中では、NAV-17HWや、イーソス6mm等の巨大な接眼レンズを利用する時には、接眼レンズにブラケットを固定します。NAV-17HWは径の大きさがギリギリですが、何とか入ります。このアピース非常によく見えるのですが・・・、デカさも半端じゃないです。

NAV17-HW

眼視の際は、③をゆるめれば、この通り、簡単に回転方向にカメラを外せます。
回転

眼視と写真撮影を即座に切り替えることが出来る非常に使い勝手の良いパーツでお気に入りです。

私は10数本接眼レンズを持っていますが、性能ということではなく、光軸や位置調整が行いやすい接眼レンズ(コリメート法に向いた接眼レンズとでも申しましょうか)とそうではない接眼レンズがあるような気がしています。

例えば、接眼レンズとカメラの間をに若干距離を置く必要がある物もあったりするのですが、このような場合、光軸合わせに結構神経使います。べたっとくっつけられる物は調整が比較的楽です。

・・・、ま、単に慣れの問題かもしれません。
では、コリメート法、次回は合成焦点距離などに関してご説明したいと思います。

PentaxQ M42 その22013年01月07日

前回はBorg77EDⅡで撮影しましたが、今回はR200SSでM42を撮ってみました。

Nikon NAV-17HWでのコリメート法です。

倍率: 800 / 17 = 47倍
合成焦点距離: 400mm(35mm換算で2,200mm)
合成F値:2
感度:ISO-400
露出:15秒

RAWで撮影した物を硬調に仕上げてみました。そのため元の画像より暗めになってます。
 
R200SS-M42

撮影は昨日ですが、北極星の見えないベランダからお気軽にという感じです。
強烈なコマ収差が出ていますが、大きさを見ていただきたいのでノートリミングです。

実は、撮影中は丸にならない星像をピントずれかと思って神経質にピント調整やカメラの光軸修正を行ってましたがコマコレクターを使えば解決だったようです。

月のない条件が幸いしたのか、結構淡いところまで写ってますね。

Pentax Q コリメート法 その32013年01月09日

コリメート法の合成焦点距離についてご説明したいと思います。

惑星を撮影する場合200倍以上欲しいということは前回までにご説明したとおりです。

では、コリメート法で200倍を実現するには・・・、これは簡単ですよね、望遠鏡に200倍のアイピースを付けて、標準レンズで覗いて撮影すれば良いのです。

倍率は上記で良いのですが、考えなければいけないのは明るさ、つまりF値です。それを考える際に、合成焦点距離が必要になります。

コリメート法の合成焦点距離は以下のように計算します。

合成焦点距離 = 望遠鏡の倍率 X カメラレンズの焦点距離

これを望遠鏡の口径で割った物がF値となります。

例えば、PentaxQ 惑星撮影の250倍の構成は以下の通りです。

・望遠鏡:R200SS + エクステンダー
  口径200 mm
  焦点距離1500 mm (エクステンダーで約1.9倍になっています)

・接眼レンズ:Ethos
  焦点距離:6mm

撮影に利用したPentaxQのレンズの焦点距離は8.5mmですから、

合成焦点距離 = 1500 / 6 x 8.5 = 2,125 mm
合成F値 = 2125 / 200 = 10.6

木星に必要な露出は、F11、ISO100で、1/32ですので、ちょうどそのくらいの露出で撮影できることになります。

合成焦点距離を理解すると必要な露出時間が分かってきますので便利ですよね。

また、コリメート法と同じ画角を直焦点で得たい場合、この合成焦点距離と同じ焦点距離の望遠鏡を準備すればよい事になります。

ちなみに、上記がPentaxQでなく、35mmフルサイズだったとすると・・・、

合成焦点距離 = 1500 / 6 x 50 = 12,500 mm
合成F値 = 12500 / 200 = 62.5

APS-Cでも、合成F値は、37.5です。

フルサイズだとF値が5段暗くなり、32倍の露出つまりこの例の場合は1秒の露出が必要ということになります。

ま、最近の一眼レフは以前の物と比較にならないほど高感度のノイズが少なくなっていますので、感度をもっとあげる・・・、というのもありですが限界もありますよね。

次回は、何故1秒露出が良くないのか、についてご説明したいと思います。